パーク

文字のサイズが操れない

床屋

 

 

 

私の故郷は都会ではなく、そのまた栄えていない方へと進んだ路地裏の、朝8時からやってる床屋へ入ってみたのだがここの店主がい〜いおっちゃんであって、くせが嫌でボリュームも減らしてほしいという私の注文に、はいと言って20分ほどの散髪を終え、押さえつけるように撫でながらドライヤーで完全に乾かすとくせがおさまると私の髪をそのように乾かしながら教えてくれた。「私のこれもくせですけどちゃんと乾かせばおさまります」とどぎついウェーブのかかった白髪を抑えながら笑うので、それかけてるんじゃないんすかとパーマだと思っていたことが口をついた。「いやいや天然」と笑みを増す店主にかっこいいですなどと懲りずに続け ついにははにかみ笑顔の「ありがとうございます」を頂戴してしまった。帰り道、自宅に着いてからもこの店主との会話が今日を生きた私の証のように輝いて感じたので、私は安けりゃどこでも、にしてもここはあまり期待せずに行こうとドアを開けた手前申し訳なくも思うが、それほど魅力的なあの時間があったということを今は思い出してこすりにこすり、記憶を脳のしわに詰め込みながらバイトへ向かうのだった。